温泉の知識

温泉って何?

いつもは訪れた温泉をご紹介しているのですが、今回はそもそも『温泉って何?』というところをお話ししたいと思います。

温泉をご紹介していると普段聞き慣れないような言葉も出てきますし、まずはそのことをご説明すべきだろうと思い今回は趣向を変えてみました。

温泉の定義

実は温泉とは『温泉法』という法律によって明確に定義されています。
ご存知でした?何となくでは無かったんです。

法律の中に『地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表①に掲げる温度又は物質を有するもの』と記載されています。
法律の文章らしく何だか堅苦しくて、パッと理解することが出来ませんよね。

肝心の条件は、以下の2つのうちどちらか1つクリアすれば晴れて『温泉』を名乗ることが出来ます。

物質名 含有量(1㎏中)
溶存物質(ガス性のものを除く) 総量1,000㎎以上
遊離炭酸(CO2) 250㎎以上
リチウムイオン(Li+) 1㎎以上
ストロンチウムイオン(Sr2+) 10㎎以上
バリウムイオン(Ba2+) 5㎎以上
フェロ又はフェリイオン(Fe2+,Fe3+) 10㎎以上
第一マンガンイオン(Mn2+) 10㎎以上
水素イオン(H+) 1㎎以上
臭素イオン(Br–) 5㎎以上
沃素イオン(I–) 1㎎以上
ふっ素イオン(F–) 2㎎以上
ヒドロひ酸イオン(HAsO42-) 1.3㎎以上
メタ亜ひ酸(HAsO2) 1㎎以上
総硫黄(S)〔HS–+S2O32-+H2Sに対応するもの〕 1㎎以上
メタほう酸(HBO2) 5㎎以上
メタけい酸(H2SiO3) 50㎎以上

温泉の泉質

温泉は、含まれている化学成分や、温度、液性(pH)、色、匂い、味、肌触りなど様々な特徴があります。
よく温泉に行くと、温泉成分の分析表が掲示されていますよね。
温泉の感じ方は決して数値ですべてを理解できるものではありませんが、知っていることで温泉の楽しみ方に幅が出て彩を加えてくれることでしょう。

温泉の泉質は、温泉に含まれている化学成分の種類とその含有量によって決められ、下の表のように10種類に分類することができます。
温泉が療養泉の基準に満たない場合は泉質名はありません。
その場合は温泉分析書に「温泉法上の温泉」または「温泉法第2条に該当する温泉」というように記載されています。

以前は、炭酸泉、重曹泉、食塩泉、正苦味泉、芒硝泉、石膏泉、緑礬泉など、いわゆる「旧泉質名」が使われていましたが、昭和53年から、主な化学成分を記した「新泉質名」を使うよう、環境省によって改訂されました。

私も過去の記事を見返したのですが、旧泉質名と新泉質名をごちゃごちゃにして使っているところがありました(汗)

新泉質名10種類と旧泉質名の対比表

掲示用新泉質名 旧泉質名 新泉質名
単純温泉 単純温泉 単純温泉
アルカリ性単純温泉
塩化物泉 食塩泉
含塩化土類-食塩泉
含土類-食塩泉
ナトリウム-塩化物泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物泉
ナトリウム・マグネシウム-塩化物泉
炭酸水素塩泉 重炭酸土類
重曹泉
カルシウム(・マグネシウム)-炭酸水素塩泉
ナトリウム-炭酸水素塩泉
硫酸塩泉 硫酸塩泉
正苦味泉
芒硝泉
石膏泉
硫酸塩泉
マグネシウム-硫酸塩泉
ナトリウム-硫酸塩泉
カルシウム-硫酸塩泉
二酸化炭素泉 単純炭酸泉 単純二酸化炭素泉
含鉄泉 鉄泉
炭酸鉄泉
緑礬泉
鉄泉
鉄(Ⅱ)-炭酸水素塩泉
鉄(Ⅱ)-硫酸塩泉
酸性泉 単純酸性泉 単純酸性泉
含よう素泉 含ヨウ素-食塩泉 含よう素-ナトリウム-塩化物泉
硫黄泉 硫黄泉
硫化水素泉
硫黄泉
硫黄泉(硫化水素型)
放射能泉 放射能泉 単純弱放射能泉
純放射能泉
含弱放射能-○○-△泉
含放射能-□□-◇泉

それでは泉質10種類の中身をご説明します。

単純温泉とは

基準

温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg未満で、湧出時の泉温が25℃以上のものです。
このうちpH8.5以上のものをアルカリ性単純温泉と呼んでいます。

特徴

肌触りが柔らかく、癖がなく肌への刺激が少ないのが特徴です。お子様やお肌が弱い方でも安心して入ることが出来る泉質です。
アルカリ性単純温泉は、入浴すると肌が「すべすべ」する感触があるのが特徴です。

代表的な温泉地

飯坂温泉、鬼怒川温泉、鹿教湯温泉、下田温泉、道後温泉、武雄温泉、湯布院温泉など

塩化物泉とは

基準

温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が塩化物イオンのものです。

特徴

陽イオンの主成分により、ナトリウムー塩化物泉、カルシウムー塩化物泉、マグネシウム―塩化物泉などに分類されます。
日本では比較的多い泉質です。
塩分が主成分となっているので、飲用すると塩辛く、塩分濃度が濃い場合やマグネシウムが多い場合は苦く感じられます。
塩分が汗の蒸発を防ぐことで保温効果が高いという。

代表的な温泉地

定山渓温泉、肘折温泉、塩原温泉、湯河原温泉、伊東温泉、渋温泉、和倉温泉、城崎温泉、白浜温泉、皆生温泉、指宿温泉など

炭酸水素塩泉とは

基準

温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が炭酸水素イオンのものです。

特徴

陽イオンの主成分により、ナトリウムー炭酸水素塩泉、カルシウムー炭酸水素塩泉、マグネシウムー炭酸水素塩泉などに分類されます。
カルシウムー炭酸水素塩泉からは、石灰質の温泉沈殿物、析出物が生成されることがあります。
皮膚の清浄作用や浴後の清涼感があり、肌がなめらかに感じられます。

代表的な温泉地

湯の川温泉、乳頭温泉、伊香保温泉、赤倉温泉、小谷温泉、龍神温泉、嬉野温泉など

硫酸塩泉とは

基準

温泉水1kg中に溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が硫酸イオンのものです。

特徴

陽イオンの主成分により、ナトリウムー硫酸塩泉、カルシウムー硫酸塩泉、マグネシウムー硫酸塩泉などに分類されます。
酸素を血液に多く送る作用があり、動脈硬化予防や保温効果があるという。
また、飲泉で慢性便秘の改善や胆汁の分泌を促すとされる。

代表的な温泉地

浅虫温泉、遠刈田温泉、蔵王温泉、四万温泉、箱根強羅温泉、山代温泉、玉造温泉など

二酸化炭素泉とは

基準

温泉水1kg中に遊離炭酸(二酸化炭素)が1,000mg以上含まれているものです。

特徴

入浴すると全身に炭酸の泡が付着して爽快感があるのが特徴です。
ただし加温をすると炭酸ガスが揮散する場合があります。
飲用すると炭酸の爽やかな咽越しが楽しめます。
日本では比較的少ない泉質です。俗に「泡の湯」とも呼ばれることがあります。

代表的な温泉地

玉川温泉、稲子温泉、有馬温泉、花山温泉など

含鉄泉とは

基準

温泉水1kg中に総鉄イオン(鉄Ⅱまたは鉄Ⅲ)が20mg以上含まれているものです。陰イオンによって炭酸水素塩型と硫酸塩型に分類されます。

特徴

温泉が湧出して空気に触れると、鉄の酸化が進み赤褐色になる特徴があります。
飲泉後にお茶やコーヒーを飲むと、タンニンと鉄が結びついて口の中や歯が黒くなってしまうこともあるらしいので注意を。

代表的な温泉地

登別温泉、土湯温泉、加賀井温泉、長良川温泉など

酸性泉とは

基準

温泉水1kg中に水素イオンが 1mg以上含まれているものです。

特徴

口にすると酸味があります。殺菌効果もあります。ヨーロッパ諸国ではほとんど見られない泉質ですが、日本では東日本を中心にみることができます。
酸性が強く殺菌効果が高いため水虫に有効という。肌の弱い人は浴後、真水で洗うとよい。

代表的な温泉地

酸ヶ湯温泉、蔵王温泉、岳温泉、草津温泉、蓼科温泉、黒川温泉など

含よう素泉とは

基準

温泉水1kg中によう化物イオンが10mg以上含有するものです。

特徴

非火山性の温泉に多く、時間がたつと黄色く変色します。
ピリッとした感覚の薬味がして、薬のよう素の匂いが特徴です。

代表的な温泉地

青堀温泉、新屋温泉、前野原温泉、新津温泉、白子温泉など

硫黄泉とは

基準

温泉水1kg中に総硫黄が2mg以上含まれているものです。

特徴

硫黄型と硫化水素型に分類され、日本では比較的多い泉質です。
タマゴの腐敗臭に似た特有の臭いは、硫化水素によるものです。
湯の花が見られ、肌を滑らかにしてくれる特徴があります。

代表的な温泉地

層雲峡温泉、鶯宿温泉、那須温泉、奥日光高湯温泉、月岡温泉、野沢温泉、戸倉上山田温泉、白骨温泉、湯の峰温泉、南紀勝浦温泉、雲仙温泉など

放射能泉とは

基準

ラジウム泉、ラドン泉ともいう。
温泉水1kg中にラドンが30×10-10キュリー以上(8.25マッへ単位以上)含まれているものです。

特徴

放射能というと人体に悪影響を及ぼすと考えられがちですが、レントゲン等の放射線量よりずっと少ない量となっています。ごく微量の放射能は、むしろ人体に良い影響を与えることが実証されています。

代表的な温泉地

カルルス温泉、夏油温泉、村杉温泉、湯の山温泉、三朝温泉、川棚温泉など

ここまで色々と説明してきましたが、頭でっかちにならず温泉に浸かった自分の感覚を信じていただきたいとも思っています。
10種類のカテゴリー分け参考であり、実際に1つの温泉地でも複数の泉質が見られたり、1つの温泉が2つ以上の基準を満たしていることもあります。

皆様の温泉を楽しむための助けとなれば幸いです。

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